
みなさんは、中国のお菓子と聞いて何を思い浮かべますか。月餅や杏仁豆腐を思い出す人も多いかもしれません。しかし最近、中国のSNS、特に小红书(REDBOOK)では、「これって本当に中国の伝統スイーツ?」と思ってしまうような新しい食べ物が次々に登場しています。
今回は、中国の若者の間で注目されているスイーツを通して、今の中国の食文化の変化を紹介します。テーマは、伝統的なお菓子として知られる糖葫芦(タンフル)と、そこから広がった新しい食べ方である「固体杨枝甘露」です。
1. タンフル(糖葫芦)とは何か
タンフルは、中国北方を中心に広まった伝統的なお菓子です。特に北京では、冬になると屋台で売られる定番のおやつとして親しまれてきました。赤い実が串に刺さり、つやつやした飴で覆われている見た目が特徴です。
もともとの定番は、山楂(サンザシ)という果実を使ったものです。山楂はとても酸味が強く、それを砂糖の飴で包むことで、「甘いけれど酸っぱい」という独特の味になります。外はパリッと硬く、中はキュッと酸っぱい。このコントラストが、昔ながらのタンフールーの魅力でした。

2. 最近のタンフルは何が違うのか
近年、タンフルは大きく変化しています。現在よく見かけるのは、山楂ではなく、さまざまなフルーツを使ったタイプです。
例えば、シャインマスカットやいちごだけでなく、みかん、ブルーベリー、チェリーなど、日本でもなじみのある果物が使われています。さらに、フルーツにギリシャヨーグルトを合わせたり、こしあんやモチ米と組み合わせたりするものもあります。一方で、山药(中国のヤマノイモ)のような、昔から食べられてきた伝統的な食材を使ったタンフールーもあり、新しさと伝統が同時に存在しているのが特徴です。

ここで重要なのは、最近のタンフルは「なにかををはさむお菓子」ではないという点です。基本はあくまで果物が主役で、そこに別の素材を組み合わせるという形です。
また、奶皮子(ナイピーズ)を使ったタンフールーも人気があります。奶皮子とは、牛乳を温めたときに表面にできる膜を集め、乾燥させた内モンゴル発祥の乳製品です。ミルクのコクがとても強く、ほんのり甘みがあります。もともとは草原地帯の保存食でしたが、今では「伝統的で体に良さそう」というイメージから、若者向けスイーツにもよく使われています。

3. なぜ今、タンフルが流行しているのか
タンフルが再び注目されている理由の一つは、SNSとの相性の良さです。串に刺さった形は写真に撮りやすく、色の組み合わせも分かりやすいため、投稿しやすいスイーツと言えます。
もう一つは、味の変化です。昔のように強い酸味ではなく、甘さや食べやすさが重視されるようになりました。日本や韓国のスイーツ文化の影響もあり、「軽く食べられる」「見た目がかわいい」ことが重要視されています。
このように、タンフールーは伝統を残しつつ、若者の好みに合わせて形を変えたスイーツになっています。
4. 杨枝甘露とは何か
杨枝甘露(ヤンジーガンルー)は、もともと香港で生まれたデザートです。マンゴー、ココナッツミルク、柚子系の果物、タピオカを使い、スプーンですくって食べる、または飲むタイプのデザートとして知られていました。

5. 「個体」という新しい食べ方
最近REDで話題になっている個体杨枝甘露は、これまでの杨枝甘露とは見た目も食べ方も大きく異なります。
皮をむいたマンゴーを半分、または厚切りにし、その上にギリシャヨーグルト、柚子の粒やソース、宝宝珍珠(小粒のタピオカ)をのせます。ゼリーのように固めるわけではなく、材料をそのまま組み合わせただけの、とてもシンプルな形です。
これは、杨枝甘露を「固体化」したというよりも、材料を分解して再配置した食べ方だと言えます。スプーンを使わず、そのままかじって食べられる点も、今の若者らしい特徴です。

6. タンフルとつながる流れ
まず、マンゴーの上にギリシャヨーグルトや柚子、珍珠をのせた「固体杨枝甘露」があります。
この形をそのまま飴でコーティングした、大きなバージョンの糖葫芦が作られることもあります。
さらに別の形として、マンゴーをカットし、柚子を粒状にして、ギリシャヨーグルトと混ぜ、まん丸に成形してから串を通し、飴でコーティングするタイプも見られます。
どの場合も、杨枝甘露の「味の組み合わせ」はそのままに、形と食べ方だけが糖葫芦風に変えられているのが特徴です。
ここから分かるのは、中国の若者が、伝統的なスイーツをそのまま受け継ぐのではなく、自由に組み合わせ、新しい食べ方を作っているということです。
おわりに
タンフールーと個体杨枝甘露は、今の中国のスイーツ文化をとても分かりやすく表しています。伝統を大切にしながらも、今の生活や感覚に合う形へと変えていく。その柔軟さこそが、現在の中国の若者文化の特徴なのかもしれません。
スイーツという身近なテーマから、中国の「今」を感じ取ってもらえたらうれしいです。
