中国語学習者の皆さん、「不」と「没」の使い分けについて悩んで経験がありませんか。これらの否定詞は、文脈や意味合いによって使い分ける必要がありますが、初級の段階でどちらを使うかを悩む学習者が多くいます。実は下記2つのポイントを押さえれば、ほとんどの場面での使い分けがわかるでしょう。
1. 主観と客観の視点からの使い分け
「不」は主観的な否定を表します。例えば、意志や計画、習慣、状態などの否定に使われます。「不」は、話し手の主観的な意図や感情を反映していることが多いです。以下の例を見てみましょう。
- 我不去。(私は行かない。)
- 他不吃纳豆。(彼は納豆を食べない。)
これらの例では、「不」は話し手の主観的な判断や状態を表しています。一方、「没」は客観的な事実や経験の否定に使われます。過去の出来事や既成の事実に対する否定を示す場合、「没」が適しています。
- 我没去。(私は行かなかった。)
- 他没吃纳豆。(彼は納豆を食べなかった。)
このように、「没」は過去の事実や経験を否定する際に使われ、話し手の主観的な意図とは関係なく、客観的な事実を述べています。
2. 将来と過去の視点からの使い分け
「不」は未来の行動や状態を否定する際に使われます。将来の予定や意志に対する否定を示す場合、「不」が適しています。
- 明天我不去上班。(明日は出勤しない。)
- 他以后不喝酒了。(彼は今後お酒を飲まない。)
これらの例では、話し手が未来の行動や計画を否定しています。一方、「没」は過去の行動や経験を否定する際に使われます。既に起こった出来事や完了した行動に対する否定を示す場合、「没」が適しています。
- 昨天我没去上班。(昨日は出勤しなかった。)
- 他昨天没喝酒。(彼は昨日お酒を飲まなかった。)
練習問題
( )に「不」か「没」を入れてください
1.A:你喜欢运动吗?(あまり好きですか。)
B:我( )喜欢运动。 (運動が好きじゃないです。)
2.A:他昨天去大阪出差了吗?(彼は昨日大阪へ出張に行きましたか。)
B:他昨天( )去大阪出差。 (行かなかったです。)
3.A:我昨天做的回锅肉你怎么都没吃?(なんで私が作った回鍋肉を食べなかったの。)
B:我( )吃猪肉。 (私は豚肉を食べないです。)
↓解答は文章の最後までご覧ください。
まとめ
「不」と「没」の違いは決して上記2点だけではないと思います。ただし、筆者が長年中国語教ででの経験によって、「主観と客観」、「過去と将来」の2点を押さえておけば、学習者たちはほとんどの場面での判断はできたことがわかりました。また、本文における「不」と「没」の使い分けは、主に動詞と連用する場合の話です。動詞以外の単語との連用については話が変わりますので、今回は割愛させていただきます。
練習問題の解答 1.不 2.没 3.没
第1問は「喜欢」(好き)があります。好きかどうかは「主観的な判断」ですので、「不」を使うべきです。
第2問は「昨天」(きのう)があるため、「過去」の話だと分かります。「過去の客観的事実の有無」については、「没」を使うべきです。
第3問は「昨天」があって、「過去」の話に見えますが、会話の流れから見ると、Bは「食べたかどうか」について回答するではなく、「食べなかった理由」について語っています。回鍋肉を食べなかったのは、豚肉を食べないからです。豚肉を食べないのは「主観的な判断」ですので、「不」を使うべきです。