
去る6月24日、深圳にて「APEC中小企業ビジネスフォーラム」が開幕しました。
今年のテーマは「デジタル・インテリジェンスによる発展、開放とイノベーション、協力による共栄」です。本フォーラムには、APEC(アジア太平洋経済協力)に加盟する各エコノミーの政府関係者、有識者、そして最前線で活躍する企業代表など、約500名が一堂に会しました。
このフォーラムは、APECにおける中小企業協力メカニズムの非常に重要な交流プラットフォームとして機能しています。加盟エコノミーの政府と中小企業との直接的な対話を促進するだけでなく、二国間・多国間協力の推進、中小企業独自のイノベーション促進、そしてグローバルなビジネス環境の改善などに多大な役割を果たしています。
注目すべきは、本フォーラムが2017年以降、中国で6回連続で開催されているという点です。そして今回、その舞台として「深圳」が選ばれたことは決して偶然ではありません。深圳は「アジアのシリコンバレー」と称され、大企業だけでなく、無数の革新的な中小企業(SME)やスタートアップがエコシステムを形成し、猛烈なスピードで成長を続ける都市だからです。

「羅湖(ルオフー)区」の新たな挑戦と国際展開の加速
会場では、具体的な成果として「アジア太平洋中小企業協力区(深圳・羅湖)」の建設成果が公表されました。
羅湖区といえば、1980年代に深圳が経済特区として指定された際、最も早く開発が進んだ「深圳発展の原点」とも言える地域です。近年、この歴史あるエリアが再び大規模な再開発と産業のアップグレードを進めており、APEC地域全体の中小企業が協力し合うためのハブとして機能し始めていることは、非常に感慨深いものがあります。
さらにフォーラム内では、中小企業の国際展開(グローバル化)を支援するための複数の協力協定が締結されました。優れた技術やアイデアを持ちながらも、海外進出のノウハウやネットワークに課題を抱える中小企業にとって、こうした国家間・地域間の公式なサポート体制が強化されることは、国境を越えたビジネスチャンスが爆発的に広がることを意味しています。
「AI」と「グリーン・低炭素」が切り拓く質の高い発展
また、本フォーラムの基調講演では、現在のグローバルビジネスにおける最重要キーワードである「人工知能(AI)」、「グリーン・低炭素」、そして「企業のグローバル展開」について活発な議論が交わされました。
AIの進化はあらゆる産業の構造を根底から覆しつつあり、デジタル・インテリジェンス(数智化)の導入は、資金力のある大企業だけでなく、俊敏に動ける中小企業にこそ大きな武器となります。さらに、気候変動問題に対応するための「グリーン・低炭素」技術は、これからの企業がグローバルサプライチェーンに参入するための必須条件(パスポート)となっています。電気自動車(EV)メーカーのBYDなどを筆頭に、環境エネルギー分野でも世界をリードする深圳でこれらのテーマが議論されたことは、参加した企業代表たちに「質の高い発展」に向けた明確な羅針盤を提供したことでしょう。
ここで重要になるのが、「人」の存在です。
さて、このニュースを私たち「深圳大学東京校」という視点から読み解くと、どのようなメッセージが浮かび上がってくるでしょうか。
日本もまたAPECの重要な加盟エコノミーであり、日本国内には高度な技術力や伝統を持つ素晴らしい中小企業が無数に存在します。しかし、少子高齢化や国内市場の縮小という課題に直面する中、日本のSMEにとっても「デジタル化」と「グローバル展開」は待ったなしの急務です。
一方、深圳には圧倒的な実装スピード、柔軟なサプライチェーン、そして新しいものを貪欲に取り入れる巨大な市場があります。日本と深圳(中国)、ひいてはAPEC全体の中小企業が、互いの強みを活かして協力・共栄していく未来は、決して夢物語ではありません。今回のフォーラムで締結された数々の協力協定は、その道筋をつくるものです。
