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HSK3.0とは?「HSKの点数」と「中国語を使える力」を考え直す

中国語を勉強している人なら、「HSK」という試験を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

HSK(漢語水平考試)は、中国語を母語としない学習者の中国語能力を測る国際的な標準化試験です。中国の大学への進学や留学、奨学金、就職など、さまざまな場面で中国語能力を証明する資格として利用されています。中国語試験サービス網でも、大学への入学、コース履修、単位認定、企業での採用・研修・昇進などがHSKの活用場面として紹介されています。

そして今、このHSKが大きく変わろうとしています。それが「HSK3.0」です。

HSK3.0とは?

これまで広く知られてきたHSKは、1級から6級までの6段階で構成されていました。

一方、HSK3.0では、従来の6段階から「初等・中等・高等」の3段階、1級から9級までの9つのレベルへと体系が拡張されます。

また、評価する能力も、単に「どれだけ単語や文法を知っているか」という考え方から、聞く・話す・読む・書く、さらに高等段階では翻訳も含めた総合的な中国語能力を評価する方向へと変わります。公式サイトでは、新HSKについて「タスク・話題・語彙・文法・漢字」の5つの側面から、学習者が達成すべきコミュニケーション能力を示す体系であると説明されています。

つまりHSK3.0は、単純に「6級から9級に増えた」という話ではありません。

「中国語をどの程度知っているか」だけではなく、「中国語を使って何ができるのか」をより幅広く評価しようとする方向への変更と考えることができます。

HSK3.0では「HSKK」も変わる?

HSK3.0について調べていると、多くの人が気になるのが「HSKK」です。

HSKKとは、HSK口語試験のことで、これまでHSKの筆記試験とは別に、中国語の「話す力」を測る試験として実施されてきました。

私自身、以前中国語講師として学生を指導していた頃、よく聞かれた質問があります。

「先生、HSKKを受けたほうがいいですか?」

この質問に対して、私は正直なところ、「受けたほうがいいよ」と自信を持って答えることができませんでした。

もちろん、HSKKは中国語を話す力を測る試験です。中国語の会話力を客観的に示すという意味では、受験することに意味があります。

ただ、学生がHSKKを受けるべきかどうかを考えるとき、私が気になっていたのは、**「その資格が進学や就職の場面で、実際にどのように評価されるのか」**という点でした。

当時、大学への進学や就職などで中国語能力を確認する場合、私が目にする募集要項や応募条件では、「HSK○級」という形で、HSKの筆記試験の級・スコアを確認するケースがほとんどでした。

まだ「完全移行」ではない

ここは、これからHSKを受験する人にとって特に注意してほしいところです。

HSK3.0は、すべてのHSK試験が一斉に新制度へ切り替わった、という状態ではありません。

2026年にはHSK3.0の世界試行が行われており、2026年9月20日には第2回世界試行が実施されます。

中国語試験サービス網の公式通知によると、今回の試行は世界規模で行われ、紙筆試験と机上のインターネット試験の2方式が用意されています。どちらの方式を実施するかは、受験する試験会場によって異なります。

したがって、現時点では「HSK=すべてHSK3.0」と考えるのではなく、自分が申し込む試験がHSK3.0の試行なのか、従来型のHSKなのかを確認することが重要です。

HSK3~6級は、対応する口語試験との同時申込が必要

2026年9月20日のHSK3.0第2回世界試行では、公式通知に、

「HSK3~6級は、対応する級の口語試験と同時に申し込む必要がある」

と明記されています。

つまり、今回のHSK3.0試行では、HSK3~6級を受験する場合、筆記試験だけを申し込んで、口語試験は必要に応じて別途受験する、という方式ではありません。

対応関係は次のとおりです。

HSK3.0 第2回世界試行「HSK+口語」早見表

HSK3.0受験級同時申込が必要な口語試験従来のHSKKとの対応同時申込
HSK1級なし不要
HSK2級なし不要
HSK3級HSK3級 口語HSKK初級相当必要
HSK4級HSK4級 口語HSKK中級相当必要
HSK5級HSK5級 口語HSKK上級相当必要
HSK6級HSK6級 口語HSKK上級相当必要

公式通知では、HSK3.0の料金体系・試験構成について、HSK3級+口語は従来の「HSK3級+HSKK初級」、HSK4級+口語は「HSK4級+HSKK中級」、HSK5・6級+口語は「HSK+HSKK上級」に相当する形で示されています。

ここで注意したいのは、「HSKKが廃止された」という意味ではないことです。

現在も中国語試験サービス網では「HSK Speaking Test」として口語試験が案内されており、初級・中級・上級の3段階で実施されています。

したがって、現時点では、

「HSK3.0の第2回世界試行では、HSK3~6級について、対応する口語試験を同時に申し込む仕組みになっている」

と理解するのが最も正確でしょう。

「HSK6級なのに、あまり話せない?」という疑問

私は中国語講師として学生を指導してきた経験に加え、採用する側の視点から中国語能力を見る機会もありました。

その中で、HSKの比較的高い級を取得しているにもかかわらず、実際に中国語で会話をしてみると、「思ったほど話せない」と感じるケースを見たことがあります。

もちろん、これは「HSK6級を持っている人は話せない」という意味ではありません。

HSKの点数が高いことと、実際の会話力がまったく同じものではない、ということです。

例えば、実際の会話では、

  • 相手の話をその場で理解する
  • 適切な言葉を瞬時に選ぶ
  • 発音や声調を正確に使う
  • 相手の話すスピードに対応する
  • 自分の考えを中国語で組み立てる
  • 相手の反応を見ながら会話を続ける

といった力が必要になります。

つまり、「試験で測られる中国語力」と「実際に中国語を使う力」は重なる部分が多い一方で、完全に同じではありません。

だからこそ、HSK3.0で「話す力」がより明確に評価の中に入ってくることには意味があると私は感じています。

HSK3.0は「中国語を使う力」をどう捉えるのか

HSK3.0の大きなポイントは、レベルが9級まで増えたことだけではありません。

私が注目しているのは、中国語を使って何ができるのか、という能力をより具体的に捉えようとしている点です。

例えば「中国語を1000語知っています」と言われても、それだけでは、その人が実際にどの程度中国語を使えるのかは分かりません。

その1000語を使って、

「自分の考えを伝えられるのか」

「相手の話を理解できるのか」

「文章を読んで必要な情報を取り出せるのか」

「状況に応じて適切な表現を選べるのか」

ということが重要になります。

HSK3.0の公式説明でも、単語や文法だけではなく、タスクや話題などを含めて学習者が達成すべきコミュニケーション上の目標を示す構成になっています。

これは、中国語を学ぶ側にとっても大きな意味があるのではないでしょうか。

元中国語講師として気になった「発音」と「リスニング」の関係

ここで、私自身が中国語を教えてきた経験から、もう一つ考えていることがあります。

それは、「リスニングが苦手だから、とにかく中国語をたくさん聞けばいい」とは限らないということです。

もちろん、たくさん中国語を聞くことは重要です。

しかし、その前に「中国語の音そのものを正しく理解できているか」という問題があります。

私が学生を指導する際に意識していたのは、

まず中国語の音を正しく理解する。

次に、その音を自分でも正しく発音してみる。

自分の中に「中国語の音の基準」ができてくる。

実際に中国語を聞いたとき、その音と自分の中の基準を照らし合わせる。

結果として、聞いた音を認識しやすくなる。

という流れです。

例えば、自分では「知っている単語なのに、会話になると聞き取れない」ということがあります。

そのとき、単純に「もっと聞きましょう」と言われても、何を聞き取ればいいのか分からないことがあります。

一方、自分自身がその単語の正確な音を理解し、発音できるようになっていれば、実際の会話の中で似た音が聞こえてきたときに、「これは自分が知っているあの音だ」と認識しやすくなるのではないでしょうか。

もちろん、「正しく発音できれば必ず聞き取れる」という単純な話ではありません。

実際の会話には、話すスピード、音の変化、話者ごとの発音の違い、文脈など、さまざまな要素があります。

それでも、学習の出発点として「正しい音を知る→自分でも発音する→音の基準を作る」という考え方は、リスニング力を伸ばすうえで一つの重要な視点だと私は考えています。

深圳大学とHSK

HSKは、中国語を学ぶ人にとって単なる資格試験ではありません。

中国の大学への進学や留学、中国語学習のレベル確認、就職など、さまざまな場面で利用されています。

深圳大学でも、HSKは中国語学習・留学と関係の深い試験の一つです。

私自身、深圳大学東京校で中国語教育やHSKに関わる業務を行う中で、HSKが単なる「試験の点数」ではなく、学生の学習目標や進学・留学を考える際の一つの基準になっていることを実感しています。

だからこそ、HSK3.0への変更は、単に試験制度が変わるという話ではなく、これから中国語を学ぶ人が「何をできるようになればいいのか」を考えるきっかけにもなると感じています。

まとめ――HSK3.0を「資格の変更」だけで終わらせない

HSK3.0について調べ始めると、

「何級まであるの?」

「語彙数は何語?」

「試験時間は?」

「HSKKはどうなるの?」

といった、試験制度そのものに関する疑問がたくさん出てきます。

もちろん、これらを知ることは大切です。

特に今回の第2回世界試行では、HSK3~6級と対応する口語試験を同時に申し込む必要があるため、受験者にとっては非常に重要な変更です。

しかし、私はHSK3.0を「試験制度が変わった」というだけで終わらせないほうがいいと思っています。

HSK3.0をきっかけに、

「私は中国語を使って、何ができるようになりたいのか」

を考えてみてほしいのです。

「HSK4級を取る」

「HSK6級を取る」

という目標は、とても分かりやすい目標です。

でも、その先に、

「中国人の友人と中国語で会話できるようになりたい」

「中国の大学で授業を受けたい」

「中国企業と仕事ができるようになりたい」

「中国語の資料を自分で読めるようになりたい」

といった、具体的な目的があるはずです。

資格は、その目的に近づくための一つの「ものさし」です。

だからこそ、

「HSK○級を取った」ことだけではなく、「HSK○級を目指す過程で、自分は中国語で何ができるようになったのか」

にも目を向けてほしいと思います。

HSK3.0への変更は、私たち中国語学習者にとって、改めて「中国語ができるとは、どういうことなのか」を考える機会なのではないでしょうか。

次回は、HSK3.0の「3段階9級制」について、1級から9級まで、それぞれどのような中国語力が想定されているのかを詳しく見ていきます。

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